建設業の記帳代行・経理代行とは?工事別原価管理や外注費のポイントを税理士が解説
福岡で建設業を営む経営者の方から、次のようなご相談をいただくことがあります。
「現場が忙しく、領収書や請求書の整理が後回しになっている」
「工事ごとの利益が分からない」
「材料費や外注費を、どの工事の経費として処理すればよいか分からない」
「経理担当者を採用したいが、なかなか良い人が見つからない」
建設業の経理は、一般的な小売業やサービス業とは異なり、工事ごとに売上と原価を管理する必要があります。
適切な経理処理ができていないと、会社全体では利益が出ているように見えても、実際には赤字工事が発生していることに気付けない場合があります。
本記事では、建設業の経理が複雑になりやすい理由や、記帳代行を利用するメリット、依頼先を選ぶ際のポイントを分かりやすく解説します。
建設業の経理が複雑になりやすい理由

工事ごとに売上と原価を管理する必要がある
建設業では、会社全体の売上や経費を集計するだけでは、正確な経営状況を把握できません。
例えば、同じ時期に次の3つの工事を進めているケースを考えてみましょう。
- 福岡市内の店舗改装工事
- 福岡県内でのマンションの外壁補修工事
- 糸島市での戸建住宅のリフォーム工事
材料費、外注費、現場経費などを工事ごとに分けて記録しなければ、それぞれの工事でどの程度の利益が出ているのか分かりません。
工事別の売上と原価を集計するためには、工事台帳などを整備し、請求書や領収書に工事名や工事番号を付ける仕組みが必要です。
工事の完成時期と売上計上の時期がずれる
建設工事は、契約から完成、引渡しまで数か月以上かかることがあります。
そのため、工事代金の入金日だけを基準に売上を計上すると、正しい期間損益を把握できない可能性があります。
工事の契約内容や完成・引渡しの状況、部分的な完成の有無などを確認し、継続した基準で売上を処理することが重要です。国税庁も、建設工事の部分完成や請負収益の計上時期について取扱いを示しています。
請求書を発行した日、入金された日、工事が完了した日がそれぞれ異なる場合には、特に注意が必要です。
未完成工事の費用を分けて管理する必要がある
決算日までに工事が完成していない場合、その工事にかかった材料費や外注費などは、一般的な経費とは区別して管理します。
建設業では、工事中の原価を「未成工事支出金」として管理し、工事が完成して引き渡された段階で、売上に対応する「完成工事原価」へ振り替える処理が一般的です。
未完成工事にかかった費用を、すべてその期の経費として処理してしまうと、その期の利益が実際より少なくなり、翌期の利益が多くなるなど、損益が大きく変動する原因になります。
そのため、例えば決算時には次の点を確認します。
- 決算日現在で完成している工事
- 工事中または未完成の工事
- 各工事に使用した材料費
- 協力会社や一人親方に支払った外注費
- 現場ごとの人件費や諸経費
- すでに請求済みの工事代金
- 前受けしている工事代金
日頃から工事別に資料を整理しておくことが、正確な決算につながります。
外注費と給与の区分に注意が必要
建設業では、協力会社や一人親方へ支払う費用を「外注費」として処理することが多くあります。
ただし、請求書が発行されているという理由だけで、必ず外注費になるわけではありません。
実際の働き方が会社の指揮命令下にあり、勤務時間や作業方法が細かく決められている場合などは、税務上、給与として判断される可能性があります。
外注費か給与かは、契約書の名称だけでなく、仕事の独立性、報酬の決め方、材料や道具の負担、指揮命令関係など、実際の取引内容を踏まえて判断する必要があります。
例えば、大工、左官、とび職などへの報酬について、請負契約か雇用契約かを実態に基づいて判定するといったことになります。
誤って外注費として処理していた支払いが給与と判断された場合、源泉所得税や消費税の計算に影響することがあります。
一人親方や個人の職人への支払いが多い会社は、契約内容と実際の業務形態を定期的に確認しましょう。
建設業で管理したい主な経費
建設業では、次のような費用が発生します。
材料費
木材、鉄骨、コンクリート、塗料、電気設備、配管部材など、工事に直接使用する材料の費用です。
複数の工事でまとめて購入した場合は、使用量などに応じて工事ごとに分ける必要があります。
外注費
下請業者、協力会社、一人親方などに工事の一部を依頼した場合の費用です。
請求書に工事名を記載してもらうと、工事別の集計がしやすくなります。
労務費
自社の従業員が工事に従事した場合の給与や手当などです。
工事ごとの作業時間を記録すると、工事別の採算をより正確に把握できます。
現場経費
現場までの交通費、高速道路料金(九州自動車道、福岡都市高速など)、駐車場代、現場事務所の費用、工具や消耗品などが該当します。
会社全体の経費と、特定の工事に直接関係する経費を区別して処理することが重要です。
重機・車両関係費
建設機械や車両の購入費、リース料、修理費、燃料費、保険料などです。
購入した機械や車両は、金額や使用期間によって、購入時に全額を経費にできない場合があります。
建設業が記帳代行を利用するメリット
経営者が現場や営業に集中できる
経営者自身が領収書を整理し、会計ソフトへ入力している会社では、経理業務が夜間や休日にずれ込みがちです。
記帳代行を利用すれば、経営者が現場管理、見積り、受注活動、人材採用など、本来取り組むべき仕事に集中しやすくなります。
工事ごとの利益を把握しやすくなる
工事別に売上と原価を集計することで、次のような情報を確認できるようになります。
- 利益が出ている工事
- 材料費が予算を超えている工事
- 外注費の割合が高い工事
- 追加工事の請求が漏れている案件
- 入金が遅れている取引先
赤字工事の原因を早い段階で把握できれば、見積方法や発注先、工事の進め方を見直すことができます。
月次の経営状況を確認できる
資料が整理されていないと、決算直前まで会社の利益や納税額が分からない状態になります。
毎月または定期的に記帳を行えば、売上、粗利益、固定費、借入金返済、資金残高などを早めに確認できます。
金融機関へ試算表を提出する場合にも、月次経理が整っているとスムーズです。
経理担当者の採用・退職リスクを軽減できる
経理担当者を採用すると、給与や社会保険料だけでなく、採用、教育、引継ぎにもコストがかかります。
また、担当者が突然退職した場合、経理処理が止まってしまうこともあります。
記帳代行を利用すれば、特定の担当者だけに経理業務が集中する状態を避け、安定した経理体制をつくることができます。
決算や建設業関係の手続きに備えられる
建設業許可を受けている法人では、建設業用の財務諸表や完成工事原価報告書などが必要になる場合があります。国土交通省の建設業許可関係書類にも、貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書などが定められています。
日常の経理処理と建設業用の決算書の科目が適切に対応していれば、決算変更届や経営事項審査などに必要な資料も作成しやすくなります。
建設業の記帳代行で依頼できる主な業務
記帳代行では、一般的に次のような業務を依頼できます。
- 領収書、請求書、通帳データの整理
- 会計ソフトへの仕訳入力
- 売掛金、買掛金の管理
- 工事別の売上・原価集計
- 未完成工事の原価整理
- クレジットカードや銀行口座のデータ連携
- 月次試算表の作成
- 給与計算代行
- 決算、法人税・消費税申告(税理士業務)
- クラウド会計ソフトの導入支援
どこまで依頼できるかは、記帳代行会社や税理士事務所によって異なります。
単に会計ソフトへ入力するだけでなく、工事ごとの原価管理や決算・税務申告まで一貫して対応できるかを確認しましょう。
記帳代行を依頼する際に準備する資料
建設業の記帳代行を始める際には、主に次の資料を準備します。
- 預金通帳またはインターネットバンキングのデータ
- クレジットカードの利用明細
- 売上請求書
- 仕入・外注先から受け取った請求書
- 領収書、レシート
- 工事請負契約書、注文書、注文請書
- 工事別の見積書
- 工事一覧表
- 給与台帳、勤怠資料
- 借入金の返済予定表
- 車両、重機、工具などの購入資料
資料に工事名や工事番号を記載しておくと、工事別の集計を行いやすくなります。
メールやクラウドサービスを通じて受け取った請求書・領収書などは、原則として電子データのまま保存する必要があります。
紙へ印刷するだけでなく、保存方法も含めて経理体制を整えましょう。
建設業の記帳代行先を選ぶポイント

建設業会計に対応しているか
建設業では、一般的な勘定科目だけでなく、完成工事高、完成工事原価、未成工事支出金、工事未払金など、建設業特有の科目を使用することがあります。
建設業の経理や決算に対応した実績があるかを確認しましょう。
工事別の原価管理に対応できるか
会計ソフトへ入力するだけでは、工事ごとの採算は分かりません。
補助科目や工事工事別の部門設定や工事台帳の作成など、経営管理に役立つ形で集計できるかが重要です。
税務申告まで一貫して依頼できるか
記帳代行会社の中には、会計入力だけを行い、税務相談や税務申告には対応していない事業者もあります。
税務相談や申告書の作成は税理士業務となるため、決算や税務申告まで任せたい場合は、税理士事務所が運営するサービスを選ぶとスムーズです。
クラウド会計に対応しているか
銀行口座やクレジットカードをクラウド会計(マネーフォワード会計など)と連携すれば、手入力を減らし、資料のやり取りを効率化できます。
ただし、自動連携された取引も、工事名や勘定科目が正しいか確認する必要があります。
建設業の経理でよくあるご質問
年度の途中からでも依頼できますか
年度の途中からでも記帳代行を開始できます。
未処理の資料がある場合は、現在の会計データや直近の決算書、通帳、請求書などを確認し、どこまで処理が完了しているかを整理します。
資料が長期間たまっている場合は、早めに相談することをおすすめします。
紙の領収書が多くても依頼できますか
紙の領収書や請求書が多い場合でも対応できます。
工事別に封筒やファイルを分けたり、領収書に工事名を記載したりすると、処理がスムーズになります。
今後の業務効率化を考える場合は、スマートフォンでのスキャンやクラウドストレージの活用も検討できます。
記帳代行だけを依頼できますか
福岡経理代行サポートセンターでは、原則として税務顧問契約を前提に記帳代行サービスをご提供しています。
記帳から決算、法人税・消費税申告まで一貫して対応することで、日常の会計処理と税務申告の整合性を保ち、継続的に経営状況を確認できる体制を整えます。
建設業の記帳代行・経理代行は福岡経理代行サポートセンターへ

建設業の経理では、単に領収書を会計ソフトへ入力するだけでなく、工事別の原価管理や未完成工事の整理、外注費と給与の区分など、業種特有の知識が必要です。
経理処理が遅れると、工事ごとの利益や会社の資金繰りを把握できず、決算直前になって想定以上の納税額が判明することもあります。
福岡経理代行サポートセンターでは、福岡の中小企業を対象に、記帳代行、給与計算、クラウド会計の導入支援から、決算・税務申告まで一貫してサポートしています。サービスの中心は、専門スタッフによる記帳代行と、税務顧問を組み合わせた経理体制の構築です。
次のようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
- 領収書や請求書がたまっている
- 工事ごとの利益が分からない
- 経理担当者が退職した
- 経理担当者を採用せずに外注したい
- 建設業に対応できる税理士を探している
- クラウド会計を導入したい
- 月次の試算表を早く作成したい
現在の経理状況や工事件数、資料の管理方法を確認したうえで、会社に合った経理体制をご提案します。

参考情報(建設業の経理関係)
- 国土交通省「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」
- 国税庁「未成工事支出金の仕入税額控除の時期(No.6487)」
- 国税庁「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」

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